事務なし1人薬剤師のデメリット【私が大手DSを辞めた理由】

薬剤師

私は薬剤師を辞め、メディカルコピーライターとして医療広告代理店へ転職しました。

メディカルコピーライターとしての業務内容や働き方に惹かれたのは事実ですが、実際私が転職しようと決意をしたのはメディカルコピーライターという仕事を志望するよりも前のことです。

今回の記事では私が2年半大手ドラッグストアの事務なし1人薬剤師店舗で働いて感じた1人薬剤師店舗のデメリットを紹介します。

その上で私がなぜ他の薬局チェーンへの転職ではなく、異業種への転職を決意したのか個人的なお話もしたいと思います。

今1人薬剤師店舗に配属されて辞めたいと感じている方が私のように新たな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

事務なし1人薬剤師のデメリット

1人で薬局を回すのは単純に大変:混雑編

シンプルにまずはコレです。正直私も、処方箋枚数が少ないから暇なんじゃないの?と思っていました。

しかし、1人で働いていると処方箋が一気に3枚来ただけでパンク寸前です。

例えば1枚目に小児の散剤4種類の処方箋がきたとして予想待ち時間30分。2枚目が軟膏の混ぜでさらに待ち時間30分。

その状況で3枚目が痛み止めの貼付薬のみの処方箋だったりするんですよ。

「すみません、先に処方箋お待ちの方がいらっしゃって1時間くらいお時間かかるんですよ」

「痛み止めのテープだけなのに!?いつもは5分で薬出してくれるじゃない。だからここに来てるのに…」

と、こんなクレームに対応している間にも刻一刻と時間は過ぎ去り…クレームに丁寧に対応している間に最初の散剤の処方箋を預けたお母さんが薬局に戻ってくる…。

あるいは3枚目の処方箋にある薬が現在在庫のない薬だったら。それに気が付かず普通に順番に準備してしまうと、在庫がないことに気がつくのは1時間後。

でも患者様からしてみれば1時間も待って、薬がないので足りない分を明日取りに来て下さいと言われたら?

事務さんがいないということは先に入力して在庫を確認してくれる人がいないということ。もちろん処方箋入力を先にするという手もありますが、最初に処方箋を預けた人の待ち時間がどんどん長くなっていきます…。

粉薬を準備している間にも処方箋の受付やロキソニンの販売など、患者様、お客様に呼ばれたら対応しなくてはいけません。

一旦手を止めてOTCの対応をして、粉の準備に戻り、処方箋の受付をして、粉に戻り、と何度も中断しながらの調剤は非常に効率が悪く、本当に大変です。

1人で薬局を回すのは単純に大変:業務内容編

他の店舗では分担してやっている作業も、1人でやることになります。

1人で働いてみるとわかりますが、薬局の業務は調剤以外にもかなり多くの業務があります。

年に1回の大切な仕事、例えば薬局昨日情報の更新、処方箋枚数の報告書類、麻薬の年間届など。

毎月の仕事、麻薬や毒薬の月末棚卸し、納品伝票や日々の帳票のファイリング、レセプト請求、返戻の管理や再請求、期限切迫品のチェックや不動在庫の処理など。

月末、月初にみんなで分担して行えばなんてことない作業ですが、全部を1人で、しかも調剤を1人で回しながらやるとなるとなかなか大変な作業です。

在庫管理にまとまった時間を割けないと、期限切れによるロスも出てくるので、焦ってしまい地味にストレスです。

書類関連も、初めてみる書類を1人で記入し、1人で提出。都道府県ごとにサイトや提出書類のフォーマットが違ったりして、インターネットで検索しても書類の書き方がヒットしないことも多くあり、これもストレスでした。

レセプト請求に関連するイレギュラーも1人でやっていると不安になる場面がたくさん出てきます。自賠責、労災、スポーツ振興レセプトなどレアケースを上げるとキリがありませんが、全て1人で対応しなければなりません。

何度も繰り返しますが、1人で処方箋を捌きながらの作業です。

ダブルチェックができない

1人薬剤師ですからもちろん麻薬の調剤の際にも1人です。

12錠の一包化が来ても1人です。

薬局の過誤の半数以上は入力ミスを見逃すことが原因といいますが、自分が何かしらの思い込みをして入力ミスをしている場合、同じ人が入力チェックや監査をしてミスに気がつく可能性はやはり他の人が確認するより低いですよね。

たまに複数店舗より1人薬剤師店舗の方が過誤は少ないと主張する方がいます。実際、事例として報告されている数は少ないようです。

しかし、ミスに患者様が気付かず、レセプト返戻にならなかったミスはそのまま見過ごされている可能性もあります。

また、考えたくはないですが1人薬剤師で周りの監視の目がないため、報告をしていないというケースも考えられます。

安全に薬を投薬するためには複数名でダブルチェックが基本ではないかと思います。

スキルアップの機会が失われる

一緒に働いている薬剤師から新しい知識を得ることって少なくないですよね。新しい情報について意見を言い合ったりすることで知識を深めたり、アップデートしたりって薬剤師にとってはかなり重要なことのように思います。

また他の薬剤師の投薬を聞いて、「こういう言い回し、わかりやすいな。真似させてもらおう。」と思うこと、たくさんあると思います。

他の薬剤師の薬歴を見て、こういうことも確かに聞き取りした方がいいよな、など気付きがあるかもしれません。

当然ですが1人薬剤師店舗ではそういった機会が全くありません。

もちろん薬剤師向け専門誌を読んで、なんとか1人で知識をアップデートすることは可能ですが、一緒に働く仲間がいないというのは思う以上にモチベーションに響きます。

そういった意味では新人薬剤師さんの1人店舗への配属は本当に避けるべきだと思います。

休憩時間の確保が難しい、トイレに行けない

1人薬剤師店舗の多くは14時から15時など比較的空いている時間に1時間閉局し、薬剤師の休憩時間を作っている店舗が多いと思います。

しかし14時ぴったり、14時5分前に処方箋がきても断りづらいのが現状です。

また混雑した状況だと待ち時間が長くなり、休憩時間を挟んでのお渡しになることも。その説明にも時間がかかるんですよね。

しかも14時に来た処方箋を調剤していると、薬局の電気がついているのを見て「ロキソニンください」と新しいお客さんが入ってくる悪循環のおまけ付き。

なかなか14時に休憩に入れないのが現場の状況ではないでしょうか。

休憩が多少削れる日があることは最初は気にならないかもしれませんが、私の場合はそれが毎日となると、1人薬剤師店舗になれてきた頃にだんだんと負担に感じ流ようになりました。

混雑している状況だとなかなかトイレにも行きづらいです。待合に患者様をお待たせしている状況で調剤室の鍵を閉め、堂々とトイレに行ける薬剤師さん、どれほどいらっしゃるでしょうか。(有資格者不在時には調剤室は施錠する必要がある。)

忙しい1人薬剤師店舗の同僚は大人用オムツを使っていると言っていたほど、混雑時トイレに行きづらいです。

休みが取りづらい

1人薬剤師店舗勤務の薬剤師の場合、シフトの相談は全てエリアを担当している上司にすることになります。

複数人数の店舗であれば、「どうしても○日〜○日まで休みが取りたいから誰か入れませんか?」と自分で代わりを探すことも「代わりに10連勤になっても構わないのでなんとかなりませんか」と管理薬剤師に相談してみることも可能ですよね。

他店舗からの応援をエリア長に頼まなくてはならない場合、相談する心理的なハードルはだいぶ上がると言わざるを得ません。

相談しても「応援出せる店舗がなかったからこの日は無理」と言われてしまうこともしばしば。自分で交渉をする余地はあまりありません。

また、エリア長が休みを埋めてくれるような店舗もあります。その場合、他店で急な欠勤やトラブルがあった場合はエリア長がそちらに向かわなければならず、休みが急に返上になる場合も。

自分の体調不良の場合にも同様に休みが取りづらいです。

私はコロナ禍で熱が39度あった日、上司に朝電話し「代わりをなるべく早く見つけるから、必ず昼までには代わりを見つけるから、頼むから一旦出勤して薬局を開けて」と言われた経験があります。

(結局開局作業後1時間半ほど働き、退勤後すぐ受診したところコロナ陽性でした。)

かかりつけ算定のための携帯電話の担当は毎日自分

かかりつけをとっている場合、夜間休日の携帯電話の対応は全て自分になります。365日毎日。

実際電話がかかってくる頻度は大きな店舗よりは少ないですし、算定しているのも自分なので知らない患者様から電話がかかってくる不安はありません。それでも毎日社用携帯を持ち歩くのは相当な負担に感じました。

遅刻したら開局遅延というプレッシャー

社会人として遅刻は絶対にしてはいけない、というのは前提として知った上でのお話。

私は複数人数店舗で勤務していた頃、開け作業が1人になるときは電車が止まっても開局遅延にならないよう、いつもより早くに家を出るようにしていました。

開局遅延はあってはならないことですし、万が一開局遅延してしまうと会社に顛末書の提出を求められ、出世に響くと言われていたためです。

1人薬剤師店舗は毎日が1人開け作業です。台風の日も雪の日も1人開け作業です。

電車はいつ止まるかわかりません。毎日早くに家を出るか、あるいは顛末書を書くリスクを取るかの2択を迫られます。

少し神経質に感じるかもしれませんが、こういう細かいことでプレッシャーを感じる人は1人薬剤師には向かないということです。私は向いていませんでした。

患者との距離が近くなりすぎる

1人薬剤師店舗の良いところは、患者様の投薬を毎回自分が担当するところです。かかりつけの契約をしていない患者様とも、みんな実質かかりつけ状態。

仲良くなれるし、継続的な管理ができる。心開いてくれる患者様も多い。

その結果、選挙の投票前になると「どうしてもこの候補者に票を入れてほしいの」と長々話にくる患者様が現れたり、「今新しい事業を立ち上げようと思っていて」とビジネスを持ちかけてくる患者様が現れたり、「今日辛いことがあったから聞いてほしい」とかかりつけ算定の社用携帯に電話をかけてきたり、いやいや私友達じゃないのよ〜!となることもしばしば。

高いスルースキルが求められます。

ドラッグストアチェーン事務なし1人薬剤師店舗での私の体験

私は大手ドラッグストアに新卒で入社し、入社1年3ヶ月経った頃に1人薬剤師店舗への配属となりました。

2年目で1人薬剤師、ということに疑問はありましたが「管理薬剤師が産休取得するため、急に空きが出た。もちろん長くはならないから。」「ゆくゆくは複数人数店舗の管理薬剤師になることを見越して、早いうちに管理薬剤師の仕事を覚えてほしい」などと言われ、「長くならないなら」「今後の出世に期待して」と了承しました。

配属された当初は処方箋枚数月50枚というものすごく暇な薬局。上司に「処方箋枚数を増やしてほしい。実績としてちゃんと評価するから。」と言われ素直に努力した私。半年で枚数は倍に。1年で4倍に。

しかし、待てど暮らせど、努力が評価されることも、複数店舗へ移動になることもありませんでした。もちろんその間ずっと移動願いを出し続けています。

痺れを切らして上司に直談判。「個別指導が終われば移動できるよう手配してあげるから」と言われ、個別指導を担当。自主返還の求めなしで乗り切り、上司に移動を願い出るも「今はコロナ禍で検査の対応も始まり、移動させるのが難しい」と。

適当言われている、と気づくのが遅かったと思います。結局その1人薬剤師店舗には2年半勤務し、その頃には処方箋枚数は月350枚。近くのクリニックが月、火、木のみの営業だったため日によって枚数に偏りがあり、1日の処方箋枚数の最大は40枚。

そして転職を決意しました。

なぜ他の薬局への転職ではなく異業種への転職だったのか

まず一つ目に、大手調剤薬局やドラッグストアへの転職では結局店舗ガチャから逃れられないと考えました。

同じ会社の同期からもっと忙しい1人薬剤師店舗で大人用オムツを履いて調剤をしている話、パワハラ管理薬剤師に有給を使わせてもらえず毎日罵倒されているという話、在宅医療専門の店舗で初めて往診同行に出かけた際に看護師さんにわざと間違った集合場所を伝えられ置いてけぼりをくらった話など、さまざまな店舗のトンデモ話を聞かされていました。

良い店舗に配属されても、良い人間関係を築けても、すぐまた会社の都合で移動になるかもしれない。そんな状況で一生働きたくないな、と思いました。

もちろん、中小薬局で働くという選択肢もありました。しかし中小で自分に合わない店舗だったら、移動の可能性も今より低く、状況はより悪化するのではないか。福利厚生も十分でないところも多い、というか相談次第。経営者と合わなかったらそれこそ悲惨ではないか。

自分で薬局を立ち上げるという選択肢も考えました。1人薬剤師店舗で2年半真剣に働いたのだから、薬局を立ち上げてもやっていけるんじゃないか。薬局を成長させていくやりがいがあれば、楽しくも感じるんじゃないだろうか。

そこまで考えて、「どうせリスクを取るのであれば、何か新しいことをしてみたい」と思い立ちました。 そして転職エージェントに相談してみることにしたのです。

薬剤師はやりがいのあるお仕事

薬剤師の仕事のメリットも話し始めれば数えきれないほどあります。単純に私には合わなかった、というだけです。

コピーライターになるにあたって捨てたものもたくさんあると思います。

例えば、決まった時間までの労働で自分の裁量で働かなくても良いというのはある意味でとても良い働き方だったと思います。「進行中のプロジェクトがあり、休みの日も気になってしまう。」と言ったことが薬剤師として働いている時はほとんどなく、休みの日はちゃんと休めていたな、と感じます。

また大手ドラッグストアは福利厚生が非常にしっかりしています。薬剤師にお精が多いこともあり、産休育休の対応がしっかりしていたり、育児時短制度が長く使えたりなど、今の会社にはないメリットもたくさんありました。

何より、患者様から直接感謝の言葉をいただいたり、疑義照会の際に医師の肩からねぎらいの言葉を頂けたりと、そういった日常業務での幸せを糧に働くというのも素晴らしいことだと思います。

ただ、薬剤師が素晴らしい仕事であることと自分が本当にやりたいことかということは全くの別問題だと考えています。

ほとんどの薬剤師は高校生の頃に薬学部に進学したから、という理由でそのまま薬剤師になるのではないでしょうか。

高校生の時に、自分に本当に合う仕事が何かなんてわかるはずがありません。

もし、薬剤師として働いていて、何か違うな、と感じるのであれば私は今からでもキャリアチェンジにチャレンジしてみるのが良いと思います。

私の転職活動については以下の記事で詳しくお話ししているので是非そちらの記事も参考にしていただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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